既設風力発電検証>ナセル搭載ドップラーライダーZXTM

タービンのパフォーマンスを確認しウィンドファームの発電量向上を図る。

ナセル搭載ドップラーライダーZXTMは、風力発電機のエンジンであるローターに流入するエネルギー源である風を正面で捉え、本来の発電能力を最大限に引き出すために、次の目的で力を発揮します。

  • 前方10メートルから300メートルの流入風況観測
  • ヨー・アラインメントの検出
  • パワーカーブの計測
  • 全方角にわたる周囲地形からの影響の把握
  • 他のタービンからの影響(ウェイク)の把握
  • ローターとタービンへの動荷重の把握

そして新たな規格への対応のため、次の観測が可能であることが特長です。

  • 鉛直シア=鉛直風速分布
  • ヴィア=鉛直に沿った風向の偏向
  • ローター等価風速の算出

ウィンドファーム内でZXTMをタービンからタービンに移動し、ひとつひとつのタービンのパフォーマンスおよび置かれている環境を、ウィンドファーム全体にわたり把握することができます。


ヨー・アラインメントの検出

風力発電機のヨー(向き)はナセル上に設置されている制御用の風向センサーが支配しています。

この風向センサーは、風上にあるローターやナセルの形状そのものの影響を受け、ローターに向かってくる風の方向を正確に捉えているとは限りません。経年によるずれも発生しているかもしれません。

パワーカーブはローターが風向に正対していることを前提に作られています。運転していても規定どおりのパワーカーブが得られていない場合、このミスアラインメントが大きな原因となっていることも十分考えられます。ゼフィアDMはこれを検出します。

欧州の2MWタービンでの改善を実例に紹介します。

次のグラフはミスアラインメントの時系列観測グラフです。約15度のミスアラインメントが発見されています。風力発電機のアラインメントを調整した結果2度前後に改善しています。調整前後ではパワーカーブが上にシフトしました。すなわち発電量が改善したことを現しています。


パワーカーブの計測

次の例は風況マストでのパワーカーブ観測と、ナセル搭載ドップラーライダーでのパワーカーブ観測を比較した結果です。ここでは、周囲のタービンからの後流(ウェイク)を排除したセクターでの比較を行なっています。

なおこの例ではローター面を5つの水平スライスで区切ったローター等価風速を基準としています。

従来のマスト観測に替わる観測が可能であることがわかります。ナセル搭載ドップラーライダーは全方位に渡って観測するので、複雑地形上などでは方位セクターに分けての観測が可能です。


ローター等価風速

IEC 61400-12-1 エディション2ではローター等価風速(Rotor-Equivalent Wind Speed)が定義されようとしています。

風力発電機の大型化とローターの大口径化に伴い、従来のローター中心の風速だけでは風速に対するタービンのパフォーマンスを代表できなくなってきたためです。

ローター等価風速はローター面を水平にスライスし、それぞれへの風速をスライス面積に按分して算出します。従い、ローター中心の風速のみならず、鉛直プロファイルが必要となります。これをナセルの上から観測できるのが円錐スキャンのZXTMです。


実例と実績

実例はZDM(ZXTMはその後継機種)もしくはWind Iris旧型

  • 計測開始
    タービン前方からの流入風の計測が開始しました。
  • レーザー目線
    JSW風力発電機J100のローター前方を睨むWind Iris(背面から撮影)。J82に比べるとナセル上は平坦で広く、作業には余裕がありました。
  • Wind Iris正面
    JSW風力発電機J100上に設置したWind Iris本体の正面(前方から撮影)。
  • ZDM遠景
    ナセルがスリムなため、地上から見てもZDMが小粒ながらよく見えます。レーザー光が見えると迫力が出ますが、可視光ではないため、何をしても見えません。
  • ZDM本体設置終了
    ナセル上への設置が完了し、これからタービン流入風の前方円錐スキャン計測が始まります。 写真に写るはZDM設置の指導と作業にわざわざ英国の製造元から来たスーパーバイザーです。作業が無事に終わり、晴れやかです。
  • ZDM三脚の設置
    JSWベストセラー風力発電機J82上でZDM本体の三脚をまず設置。決して広くはないナセルの上に、足場を組みました。
  • Wind Iris on J82
    JSWベストセラー風力発電機J82上にWind Iris本体を設置。 スリムに湾曲するナセルに単管の足場を組みました。これで何とかなります。


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